今回の名言は、2017年春に放映されたテレビ番組「報道ステーション」の松岡修造さんによるインタビューから引用しました。前回に引き続き、伊達公子さんの原動力について探っていきたいと思います。
このとき伊達さん46歳。テニスプレーヤーのセカンドキャリアで負傷した膝の手術を経て、ツアーに復帰する直前です。
2015年1月の全豪オープンの予選で膝の故障が悪化した伊達さんは、再びコートに立つために膝の手術を決意。それしか手段がなかったから決断した手術でしたが、完治する保障はなかったそうです。実際、手術後は車椅子や杖が必要で、歩けるようになったのは2ヶ月後のこと。そして過酷なリハビリは1年以上にも及んだそうです。復帰直前のインタビュー映像でも左脚は右脚の7割ほどの太さにしか戻っておらず、復帰自体がかなりの挑戦であることを物語っていました。
松岡修造さんは「なぜそこまでやるの?」という意味を込めて、「伊達公子を一言で表すと?」と質問します。すると伊達さんはこう答えました。
「悔しいことは大嫌い。できないことが嫌いなわけじゃなくて、できないことがある方が好きかも。
練習ができない日もあれば、できる日もある。それすらもおもしろい」
なんと伊達さんは「できないことがある方が好き」と笑って答えていたのです。
膝の手術後のリハビリの間も、周囲から「心は折れないのか」とよく聞かれたそうです。でも伊達さんは「その心配はしてなかった。できなかったことが1つずつできるから」と考えていました。
世界屈指の負けず嫌いで知られる伊達さんですが、その裏にはできないことに楽しんで挑むという原動力があったのです。
「何かに立ち向かう時は結果がすべてじゃない。結果が伴わなくても、やることの意味とか意義はある」とし、「もう一回立ち向かおうとしなかったことのほうが後悔する」と力強く答えていました。
このときのインタビューは春。桜が舞い散る風景をバックに行われていました。松岡修造さんはその景色が目に入ったのでしょう。
「桜が散っているけど、公子桜はいつ散るの?」と、やや意地悪な問いかけをします。
すると伊達さんは「まだ散りたくない」と声をあげます。
それでも松岡さんは「自然な流れだと散るべきだ」と続けますが、これに対しても笑顔でこう答えるのです。
「散ってもまた咲くから。1年後には」
日本人はとかく桜の散り際を美しいものととらえますが、1年後にきれいに花を咲かせるのもまた桜のよさ。
これには松岡さんも「参った」という顔をされていました。
実際には伊達さんはこの4ヶ月後の8月に引退を表明。果敢な挑戦はここで終わりとなりました。しかし、最近になって伊達さんは杉山愛さんらと「JW50」という団体を立ち上げ、日本人女子テニスの復活に一生懸命です。伊達さんの桜は何度でも咲くのです。
「できない方がある方が好き」という公子桜の心を、いつでも胸に咲かせていきたいと思いました。
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伊達公子さんの著書『Date of DATE』はこちら
伊達さんのセカンドキャリアについて書かれています。サンプルでかなりのところまで読めます。
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